地域創生/データ駆動型プランニング

地域創生のためのデータ駆動型都市計画手法を開発する。都市の観測とシミュレーションに基づく政策効果の評価ツールと、デザイン思考の方法論に基づく合意形成支援ツールによって、現状の都市計画施策の立案や合意形成に不足しているエビデンスベースの手法の導入を容易にし、まちづくり施策を支援することを目指す。 City Probe による行動データを基にした都市活動シミュレーション (City Sim) に日立のカメラによる観測技術を融合したデータ駆動型回遊モニタリングを実装するとともに、土地利用履歴等のまちデータの収集・分析も加えて、地域創生に関わる KPI を検討する。ワークショップ等の地域創生プログラムの実践から得られた知見も踏まえて、施策効果の情報を専門家以外の人にも受け入れやすい形で提供するためのインターフェース (City Scope) を開発し、アーバンデザインセンター (City Lab) をプラットフォームに、人々が参加して都市の未来を実感できる社会実験の実践・ 加速を図る。

元気高齢社会/エイジフレンドリー 社会実装モデル

「 Attendant Environment 」

超少子高齢社会はもうすぐそこまで来ています。子どもが健やかに育つ、労働世帯が楽しく働く、高齢者が安心して暮らせる、新たな環境づくりが必要です。例えば、高齢者の家庭内事故で亡くなる方は、年間 約 16,000 人にも上り、すでに交通事故死者数の約3倍にも上っています。こんなにも技術が発達しているように見える現代社会においても、生命の安全すら完全には守れていません。生体情報のセンシング・ 高度なアルゴリズム・社会的受容性・情報セキュリティなど様々な課題が山積しているからです。 私たちは、みんなが思い描いている未来の暮らし方、‘環境が私たちに寄り添い・見守り・成長を支援する’、 そういうビジョンを実現していきます。このワーキンググループでは、人を中心とした環境の在り方に関する知と技術を新結合し、多くの組織との協創を通してイノベーションを進めていきます。

脱炭素/次世代エネルギーシステム

2016年11月に発効したパリ協定は「低炭素から脱炭素への思想転換」と「途上国も含めた多くの国々の参加」といった点で意義深いが、先進国では業務ビルや住宅の民生用エネルギー消費が大きく、日本でもその温室効果ガス削減目標26%のうち約4割を民生部門で削減することになっている。その削減にはサプライ側の低炭素化が必要だが、同時にデマンド側の省エネルギーが欠かせない。本 WG では、個人の QoL (健康性、快適性、生産性など)を維持・向上させながら、エリア全体の省エネルギーと再生可能エネルギ ー導入を推進する脱炭素化マネジメントシステムの構築を目指している。

・ファシリティマネジメントシステム= RICx

R : Remote, Realtime /物理的な距離にとらわれないビル群のアライアンス化を可能とする遠隔データ管理・システム制御

I : Information technology / IoT 機器や AI 等を活用した省エネ・創エネ・蓄エネに基づくデータ駆動型

Cx 技術

Cx : Commissioning /データクレンジング、最適化、不具合検知・診断等によるエネルギーマネジメント

・ライフマネジメントシステム= Nudge 気づきを与える情報提供によって、個人 QoL を維持・向上させながらもエリアの脱炭素化に望ましい行動 をとるように促す。

両システムの有機的な連携により、建築分野の脱炭素化や個人の QoL 向上、環境投資を促進させる先導ビジネスモデルを構築し、そのポテンシャルを社会に提示する。

ビッグデータ/知識集約型システム

近年、ビッグデータによって社会インフラ・サービスに関する情報が収集可能になってきているばかりでなく、IoT(Internet of Things)の普及によって、サービス利用者・提供者間での双方向性のあるサービスが実現されつつある。例えば、カーシェアリング等に代表されるシェアリングエコノミーなどを基盤とするソフトインフラ施策には、双方向性を前提とした技術が織り込まれており、このような技術を効率的に利用した都市デザインを行うことが期待されている。
このようなデザインを行うためには、様々なビッグデータを取り扱ったうえで、都市やそこに住む人々にかかわる様々な施策やサービスを評価するための情報基盤が必要となる。

・さまざまなセグメンテーションでの生活の質の評価

・双方向性のある、はやいデータサイクルでのサービス評価

・ステークホルダー間の知識共有

などを実現するために必要になる基盤として、都市にかかわるビッグデータを有機的に組み合わせ、都市での人々の活動をシミュレーションするとともに、都市の活動実態をわかりやすく可視化するための情報基盤の仕組みを構築している。

都市政策・評価/“Society 5.0”の具現化

ハビタット・イノベーションは、先に挙げた根本問題への対処に取り組む。いずれの問題においても、次の3つの観点で解決策を立案する。

●構造転換:社会の構造的なコストパフォーマンスを向上させる。政策転換や情報技術基盤の整備により、社会価値当たりのコストが少ない手段への切り替えを図る。

●イノベーション:徹底して社会的なロスを無くす。データを活用した最適化技術で社会価値に寄与しない余分な資源消費をなくし、社会全体での無駄を無くす。

●QoL:新サービスでQoL(Quality of Life)を向上させる。データを活用した新しいサービスを生み出し、個々人の人間らしい生活を向上させる。

これらの3つの視点は、人口=人あたりの社会コストを算出する次の方程式で表すことができる。

(社会コスト/人口)=(社会コスト/リソース消費)×(リソース消費/ベネフィット)×(ベネフィット/人口)

右辺各項がそれぞれ、構造転換、イノベーション、QoLを表しており、この式の考え方は、第一項と第二項を小さくすることで、左辺の低減と、第三項の向上を両立させる、というものである。

ハビタット・イノベーションでは、東京大学が持つ工学、社会科学、人文科学などの知の蓄積を活用して、個人レベルのQoLの向上とは何であるかを洞察し、これを向上させるための政策と技術それぞれの役割を明らかにする。一方、日立が持つ社会イノベーション事業の経験を活かし、分野横断でデータを活用するプラットフォーム、社会と個人の便益のシミュレーション技術、長期的な需要変動や潜在的なニーズにきめ細かに対応できる追随性の高いシステムアーキテクチャなどの技術を開発する。これらを持続的なビジネスモデルと政策提言により社会実装することで、Society 5.0の実現を目指す。